朗読舞踏
「小男スタン・ノーフォーク」

舞踏 十亀脩之介
   吉田ゆき子
   湖上聡史
   戸沢英土
   阿賀猥    
朗読 阿賀猥

2013年10月14日渋谷クロコダイル
朗読会「漂泊する声、ポエジーの港」にて上演  





『小男スタン・ノーフォーク』

私は胸に深い穴がある
誰もがそこに入り込もうとする
大急ぎでそこを埋めようとする
深い深い私の穴

それ見ろ、それ見ろ
やつらが追いかけてくる
不死身の警官隊
機械人形のように正確にきちんと一斉に追いかけてくる
陽気に笑いいながら、歌いながら、転がるように追いかけてくる
私の深い胸をめがけて
私の胸の深い穴をめがけて
転がるように走り込んでくる

凶悪犯スタン・ノーフォーク
奴は檻の中
終身犯スタン・ノーフォーク
奴はおしまいさ。
誰もがダラーリと足を伸ばし
絹の布団の中で、眠りこける

だがそうだろうか?
本当にそうだろうか?



  ダラーリ眠る、私のその底に
小さな耳の男がいる
  スタン・ノーフォーク、小さい耳の小さい男
  やつは、そこでまわる
  くるくるくるくる孤を描いて回る
  それが奴の人生
  それが奴の全て



私には、深い穴のような胸がある
深い深い穴