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   貝      阿賀猥

どういうわけか私は貝になっているのでした。
彼女もまた。
彼女は細身の美しい巻き貝
巻き目めの縁にごくごく細い淡い色の線が入っているのです。
淡い紫、淡いピンク、淡い空色
私はただの食用の貝、サザエ

こんな我が身が恥ずかしく遠くへ逃げたいとさえ思いましたが・・・・、
彼女は私と並んで朝を迎え、夜を迎え、終始にこやかで。
けれど私には気付く事なく・・・・
     (きっとただの岩だとおもったのでしょうね)
私は人であった頃からの彼女への思いを伝えたく、シンシンとより強度を込めて、彼女を思い続けました。
思いは届いたのです、
ある日、人となった彼女は大きな真っ白い皿にたくさんのミントを敷き、まずはその上に私を乗せ、それから蒸し器に湯を沸かしました。

皿の上で私は鮮やかに輝いているのが判りました。
今から、彼女は私を食べるのです。
私は喜びに感極まり、ランランと光を発して、きらめき、勇壮でさえありました。